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積雪期無名峰690Pバリエーション単独山行(すき焼きうどん編)

いやはや、なかなか晴天に恵まれず、山に行く度に吹雪模様で「モチベーションが上がらないな〜」などと言いつつも、週末になると雪山へ出掛けてしまう…「頑なに、晴天に登らない…雪山登山家」のもじょです。(いやいや、好きで吹雪の中登ってんじゃないんだかんなっ)

さてさて、またまたまたまた…この週末も吹雪予報の山の天気にうろたえつつ、マニアック過ぎるバリエーション・ルートを探して札幌南区は定山渓方面へ向かう事にした。

狙うは…「定山渓朝日岳」稜線に連なる無名峰△777Pだ。

定山渓温泉」手前の国際スキー場への分岐から、その先のヘアピンカーブ辺りから入山し、緩傾斜の尾根に乗り、777Pを「定山渓温泉」側に下りる計画を練って自宅を出たが、山ごはんの準備に手間取って出発が遅れてしまった。

折しも、市内は晴れていたが「定山渓」が近付くにつれ、吹雪模様になってきた。

うむむむ…これは、少々厳しい状況になってきたぞぉ。

今更ながら、吹雪模様の単独ラッセルは…かなり、キツい。

オマケに計画しているのは北西風がモロに当たる尾根ルートだ。

バスが「藤野」を過ぎる辺りで、俄かに別候補を考え始めた。

この方面の、北西風が当たらない東南斜面を地形図上に探すが、そちら側には「豊平川」が横たわっている。

豊平川」に掛かる橋は極端に少ない。「八剣山」近くの「砥山橋」から「定山渓温泉」手前の「錦橋」まで数kmに渡り橋は…

イヤイヤ、そうだっ。

「小金湯」の先に「百松橋」があるでは無いか。

「百松橋」は「神威岳」へのアプローチに使われる橋ナノだ。

地形図上で素早く「百松橋」を探し、手近な取り付けそうな尾根から、その先の稜線へ視線をなぞると…お手頃な△690Pが見つかった。

おぉ、△690Pは「神威岳」から連なる稜線末端に位置し、アプローチに使えそうな林道も通っている。

オマケに、この…Co465の小ピークを乗越した先の、この平坦で細長いコルも面白そうではないか。

という事で、急遽…行き先を変更し「じょうてつバス」の「百松橋」停留所で途中下車した(相変わらず、行き当たりばったりな奴だ)。

「百松橋」入口には「工事中立入禁止」と札が掛かったゲートが設置されていたが、恐らく…林道の先にある「砥山ダム」関連の工事ナノだろう。

拙者が目指すのは、橋を渡った左手の林道ナノで問題は無いだろう。とゲートの脇をすり抜けて「百松橋」を渡った。

「神威岳」の登山届が置いてある丸太小屋の横で装具を身に付け、除雪された左手の林道へ。

50m程で除雪林道は終わり、右手の二次林に踏み込む。

重く湿った新雪が10cm程積もっていて、スノーシューとブーツの間で団子状に固まって、歩きにくい。

林を進むと前方の斜面上部に、林道の法面と思われる地形が見えた。

ジグを切って斜面を攀じり、林道に乗る。

目の前の枝尾根には、かなり段差があり取り付けそうに無いので林道を進み、取り付けそうな場所を探す。

吹雪模様だった空は、雪雲が切れて青空が覗き始めた。

あれま?

ちょっと、早まったかも知れないな。

ま、これも又人生だ。

林道を200m程進むが、取り付けそうな枝尾根は無い。

地形図を見ると緩傾斜の枝尾根まで、まだ500m近く林道を進まねばならない。

うーん、迷うところだ。

地形図で見た…あのコルのある稜線に上がるなら、この目の前の枝尾根に取り付くべきだが、林道の法面のギャップが4〜5mあり、どうしょうも無い。

暫く進むと、林道がヘアピン状に大きく曲がっている場所に辿り着いた。

尾根と尾根に挟まれた谷筋だった。

谷筋の奥は急激にせり上がっていて、谷を詰める事は難しいが、途中から右手の枝尾根に乗る斜行ルートは切れそうだった。

本格的な登坂に掛かる前に、中間着のフリースを脱ぐ。

最近のお気に入り「白桃カルピスソーダ」で喉を潤して、一服する。

上空は薄日が差し始めた。

温度計はー2℃を指している。

谷筋に取り付くと、斜面を転がり落ちてきたスノーボール(木から落雪した塊が、斜面を転がって丸まったもの)が谷底に溜まって、デブリ状に埋まっている。

雪崩るような斜面では無いが、谷筋を詰めるというのは、余り…気分的に良いものでは無い。

少しづつ勾配が増してきて、そろそろ…枝尾根に乗れそうだ。

さて、何処から乗ろうか…と地形を観察する。

ん?あの…カツラの大木の上にある段差は何だろ?

右手の尾根に向かって不自然に斜行するテラス状が怪しい。

近付いてみると、どうやら…古い林道跡のようだった。

しかし、右上する林道の先には、その痕跡は途切れている。

辺りの植生は、植林された椴松と楢やカツラ等…広葉樹の混合林だ。

伐採作業時に作られたブル道が、雨に浸食されて消えたのだろうか?

とりあえず、いい具合に斜行しているので、その林道跡を利用して右手の尾根に乗った。

湿った新雪の下は、ザラメ状の崩れ易い層があるので、なかなか…疲れる。

ま、高度を上げれば、マシになるだろう。

暫く上ると、灌木の隙間から「砥山ダム」が見下ろせた。

という事は、アソコが「小金湯温泉」だな。

お〜♪露天風呂に入っている若い女性が、バッチリ見えるではないかっ。

…というような、素敵な事態にはならず、ボンヤリと建物が見えるだけだった。

ま、直線距離で…1km以上ありそうだから、マサイ族で無い限り…裸眼で見える筈は無いノダ(残念無念)。

ジワジワと尾根筋を登っていると、だんだん暑くなってきた。

温度計を見ると…+2℃もあるではないかっ。

アウターを脱いで、インナーとフーディーだけになる。

厳冬期も、そろそろ…終わりに近付いているのだろう。

465Pが近付いてくると、勾配が増し始め登坂速度は更に遅くなった。

ちゅうか、これは…殆ど崖に近い勾配ではないかっ。

踏めば固まる湿り雪だから、なんとかステップが作れるが、乾いたサラサラ雪なら…どうにもならない斜度だ。

うむむむ…こ、こんな場所だったかな?と、足場を固めて地形図をチェックする。

う、確かに…急傾斜を示す等高線の詰まり具合だ。

つか、殆ど…二本の等高線が一本に重なって見えるぐらいに詰まっている。

イヤイヤイヤイヤ、揺れるバス中で地形図を見ていた為、二本だとは気づかなかったノダ(老眼来たか?)。

見上げる斜面は、更に勾配を増して碧空へ突き上げているようだ。

うーん、困った困った…コマドリ姉妹なのだ(追悼、島木譲二師匠、パチパチパンチの人ね)。

地形図と辺りを観察しても、トラバースで逃げる場所も無い。

ちゅうか…た、た、高いっ!

ま、落ちても灌木に引っ掛かるだろうが、予想以上の高度感がある。

しまった、しまった…島倉千代子なのだ(楽しくなってるだろ?)。

最後は、ありとあらゆる…技術を駆使して、立木に掴まりながら、なんとか…465Pに体を持ち上げた。

先ほどまでの日差しは無くなり、風が強まり小雪も舞い始めた。

慌てて、アウターを着る。

気温は一気に…ー6まで下がってきた。

なんだかんだで、直線で200mにも満たない距離に1時間も掛かってしまったノダ。

果たして、目標の690Pに届くのだろうか。

小ピークで一服して、コル(鞍部)に下りて行く。

この…コルが、なかなか良かった。

風の通り道らしく、シュカブラ(雪紋)が出来、いっちょまえに…ウインド・クラストしている。

コルの最低部には、恐らく…浸食作用に因って谷地状に凹んだ場所があり、そこには…雪洞を掘るにはお誂(あつら)え向きな雪庇も出来ていた。

その谷地を見下ろしながらブラブラ歩いていると、ふいに足元から突然…雪面が消えた。

雪庇を踏み抜いてしまったノダ。

ぬわっ!

もんどりうって、谷地の底に転がり落ちた。

イテテテ…

落差は1m半程だったので、滑落…と呼ぶのも、おこがましいが、初めて雪庇を踏み抜く体験をしてしまった。

しかし、いきなり…足元の地面(雪面)が無くなる感覚というのは、気持ちが悪いものだ。

まるで…

スイカ割りで空振りしたような、イタズラで…坐ろうと思っていた椅子を外されるような、立ち合いで舞の海が目の前から消えるような、クラシックだと思って飲んだら…スーパードライだったような、寄る辺無い感じ…擬音で表すなら「スカッ」という具合ナノだ。

これが、「トムとジェリー」なら、空中で暫し滞空し、「あらま」という感じで、一呼吸後に落下するのだろうが、現実は…瞬く間だから、為す術も無い。

気を取り直して、長いコルを進むと…椴松の大木に古い羆の爪痕を発見した。

かなり横幅があるので、雄の成獣だろうか。

ま、この程度の痕跡は…北海道で山登りをしていれば、日常茶飯事だ。

しかし、そろそろ…羆ちゃんも、冬篭もり穴から出て来る季節だから、警戒はしておくべきだろう。

一年で唯一、のほほんと歩ける厳冬期の終わりは近い。

細長いコルを抜け、再び尾根筋に取り付く。

傾斜は先程より緩やかだが、時折…突風が吹き抜け吹雪き始めた。

灌木の間から目指す690Pが見えるが、まだ1時間以上掛かりそうだ。

時刻は午後2時に近い、腹も減ったし、クラシックも飲みたい。

「今日は、ここまで…だな」

下山の事と、下山後の「まつの湯」(小金湯温泉の古いほうね)の事を考えると、ここいらが潮時だろう。

とりあえず、再訪した時の為に立ち枯れた大木にマーカーを残置しておく。

さて、風の当たらない場所を探して、昼飯にしよう。

今日は、西友でアンガス牛切り落としが安くなっていたので、「牛すき焼きうどん」にする。

吉野家」の「すき焼き御膳」をヒントに考えた…うどんバリエーションだ。

うどんに割り下が染み込むまで、じっくり煮て、生卵につけて食べると、「クラシック」に良く合った。

1時間近くノンビリして、下山に取り掛かる。

出発して暫く歩くと、右足に違和感を感じた。

スノーシューの足の甲を留めているストラップが切れていた。

ふと…何年か前の増毛山塊「濃昼岳」(ごきびるだけ)の「スノーシュー破損つぼ足下山事件」(通称…ゴキビルホイホイ事件)を思い出した。

山頂でスノーシューの連結金具が破断して、片足だけスノーシューを履いて、7km近い下山路を真っ暗な中下山した…もじょ登山史の中でも壱弐を争う苦行だった。

実は、先週の「阿部山」でストラップが一本切れていて、その事をすっかり忘れていたノダ。

つまり、三本あるストラップの内、二本切れた状態という事だ。

ま、歩けない程では無いが、残ったストラップに負担が掛かって全滅するとヤバい。

そこで、昨年の大雪山縦走でも大活躍した「お助け袋」から、細引きを取り出して、切れた部分を緊急補修する事にした。

うむむむ…なんか、見た事のある景色だな…

465Pまで下りてきて、登ってきた急斜面を覗き込むと…恐ろしいぐらいの勾配だった。

こんな場所を良く登って来たな…

尻ボれる限界を超えているし、下手をしたらマジで滑落してしまう。懸垂下降が必要な斜度だが、生憎…ロープもギアも持ってきていない。

地形図を眺めて、他の下山ルートを探る。

そこで、右手の細尾根が目に留まった。

しかし、途中に岩峰の難所があるし、あれを巻くのは大変そうだ。

そこで、思い切って…谷筋を尻ボる事にした。

しかし、先程…昼飯時に椅子を作る為に、シャベルで雪を掘り返したら弱層のような部分も見つけたし、雪崩る心配もある。

ま、なんとかなるだろう。

思い切って、谷筋にドロップインしてみた。

湿り雪のせいで、団子状に固まった雪が尻ボに溜まって、殆ど滑らない。

うーん、ダメだな…と、雪の上に座っていたら、突然…背中に衝撃を感じた。

まるで、羆に体当たりされたような、衝撃だった。

イテテテ!

な、何だぁ!?

見ると、滑った拍子に落とした雪が50cm程のボール状(スノーボールね)の塊になって転げ落ちてきて、背中に激突したのだ。

余りの衝撃に、暫し悶絶する。

うぐぐぐ…よ、予想外の攻撃技だっ。

チキショーめ、そんな裏技があったとは…

おわり。

【写真1】久し振りに晴れたが…

【写真2】すき焼きうどん

【写真3】ランチスペース