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我が父、次男の事と長女について

次男も、中学を卒業してすぐに、こちらは大工となるべく住み込みで修行に出ていた。

後に我が父となるこの次男は、元々無口ではあったが、この住み込み時代の事は特に口に出す事はなかった。

よほど辛い事があったのだと思う。

風呂の薪割りから子供の世話まで、奴隷のようにこき使われたという話を一度聞いたことがある。

何度か逃げ帰ったらしいが、その都度送り返されたらしい。

だが辛抱強く修行を終え、元々器用であった父は指物大工としての腕を買われて地元の木工会社に勤務する事になる。

指物大工とは、家を建てるという花方な大工ではなく、襖や障子など、家の中にある建具を担当する大工で、細かい仕上げが物を言う、ある意味彫刻家などに近い職人といったような位置付けである。

その頃、長女にも異変が起こる。

少し長女の話をしたい。

長女は、この家での第二子に当たる。

先に産まれた第一子は男児であったが、乳児の時に高熱を発し、死亡した。

それゆえに祖父母はこの長女を溺愛し、当時としては珍しい女学校(高等学校)にまで通わせた。

前述の、家出をした長男はこの長女の弟にあたる。

この長女が、地元のやさぐれものの一人から猛烈にアタックされ、なんと両思いになってしまい、祖母に結婚の許しを請うてきた。

だが一人娘と大事に育ててきた祖母は何としても許すことが出来ない。

何より、長男を追い出したのは地元の男達であり、恨みしかない状態である。

そんなやからに大事な一人娘をやれる訳がかいと息巻いた。

結果、長女はそのやさぐれものと駆け落ちをしてしまう。

我が家に残されたのは、指物大工の次男と、なんと長女と20も年の離れたまだ若い三男だけとなった。